「レディーミツコ」 大和和紀（著）／国際結婚・差別

◆大和和紀自選集 5 レディーミツコ (KCデラックス)










コミック: 345ページ ／出版社：講談社（1996/04）


あらすじ
1890年頃、骨董屋の娘である青山光子（東京の牛込出身）が、１８歳でオーストリア＝ハンガリー帝国の伯爵と国際結婚したお話です。
伯爵の名は、ハインリッヒ・クーデンホーフ・カレルギー。伯爵が駐日大使として在日中に、二人が知り合います。しかし、光子の父親は「異国人だし、帰国したら捨てられるのではないか」と心配し、伯爵の両親は「異国の平民娘」は分不相応だと反対。

当初は、日本で二人の男の子に恵まれ幸せに暮らすのですが、伯爵の父親が死去したので家族で伯爵の祖国へ帰国することに（１８９６年・光子22歳）。そして、日本初の伯爵夫人が誕生します。

光子は、努力して言葉や風習の違いを克服し、七人の子供にも恵まれて幸せに暮らすものの、今度は伯爵が急逝します。そこで、長男が大きくなるまでの間、残された広大な領地を統治していくために、勉強をして有能な領主となります。そして、子ども達が大きくなり、それぞれの進路を歩もうとするのですが・・・。



◆光子の結婚が、東京府（当時）に届出された初の正式な国際結婚だったようです。光子は、伯爵の祖国へともに帰国する際に、明治天皇の皇后から激励されたこと、その後オーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ1世とも会話する機会があったことが伝えられています。

伯爵夫人としてウィーン社交界へデビューするも、日露戦争に伯爵が急死して伯爵の遺産相続で訴訟が起こされたり（勝訴）、第一次世界大戦では、オーストリア＝ハンガリー帝国の敵国の日本人であったために差別が強まったりと、波乱な時期を幾たびか過ごす光子は、努力家の才女だったようです。
光子は、第一次大戦で全てを失って６７歳で亡くなりるまで、一度も日本へ帰国しなかったそうです。（ウィーン・ヒーツィング墓地へ埋葬）

コミックは、かなり前の著作物でもあり、現在わかっている史実に忠実とはいい難い部分もありますが、読み物としては面白いです。著者の大和和紀氏は、「あさきゆめみし」「はいからさんが通る」「ヨコハマ物語」などでも有名な人気漫画家です。
※著者のその他の作品は下記へ

クーデンホーフ光子伝

クーデンホーフ光子―黒い瞳の伯爵夫人 (カルチュア・ドキュメント)

ミツコと七人の子供たち (河出文庫)

なお、ゲランから、Mitsouko（ミツコ）という名前の有名な香水（１９２１年発売）が出ています。やや東洋的な香りのする大人の女性向けの香水で、光子の名に因んだとも言われていますが、定かではありません。





また、東京で生まれた次男のリヒアルト・栄次郎・クーデンホーフ・カレルギー伯爵が、欧州統合を主張した「欧州連合の父」として知られています。特に、「汎ヨーロッパ主義」を著しセンセーションを起こしたことで有名です。

栄次郎伯爵は、著作物などで全体主義・ファシズムを批判しながら友愛を提唱したため、ドイツのヒトラーから逃れる立場となり、各地を転々とした後にアメリカへ渡ったようです。そして、第二次世界大戦後にヨーロッパ議員同盟（EPU）を創設するなど、ヨーロッパ共同体の進展に大きく尽力したようです。

なお、栄次郎伯爵の「友愛」思想（心の革命による全人類の融和）は、日本の鳩山由紀夫総理大臣の祖父である鳩山一郎氏に強い影響を与えました。鳩山一郎氏が、伯爵の著作物（英訳書）を「Fraternity」を「友愛」と訳出し、友愛青年同志会を設立するなどして友愛の普及に努めたようです。

この栄次郎伯爵をモデルにした映画が、名作「カサブランカ」です。

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◆著者のその他の作品
有名なものを一部あげておきます。

・あさきゆめみし 美麗ケース入り 全7巻文庫セット
・ヨコハマ物語 全4巻セット 講談社漫画文庫
・はいからさんが通る (1) (講談社漫画文庫)
・天の果て地の限り (講談社漫画文庫 や 1-43)
・ポケットの中の奇跡 1 (1) (講談社コミックスキス)
・春はあけぼの殺人事件 (講談社漫画文庫 や 1-42)
・紅匂ふ 1 うすべにの章 (講談社漫画文庫 や 1-49)

・ゼフィルスの森 (KCデラックス)
・N.Y.小町 (1) (講談社漫画文庫)
・あい色神話 (講談社漫画文庫 や 1-47)
・虹のナターシャ (上) (講談社漫画文庫)
・はいからちゃんがやってきた!―大和和紀の子育て絵日記 (えくぼママシリーズ)

・眠らない街から (講談社漫画文庫 や 1-46)
・薔薇子爵 (講談社漫画文庫 (や1-44))
・月光樹 (講談社漫画文庫 や 1-45)
・カリフォルニアララバイ (講談社漫画文庫 や 1-48)
・ラブパック (1) (講談社漫画文庫)
・ベビーシッター・ギン! (8) (講談社コミックスKiss (516巻))
・紀元2600年のプレイボール (3) (講談社漫画文庫)







　　　　　　　　　

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